ふづきになりてぞ参りたまひける
7月になって、ようやく参内されたのである。
めづらしうあはれにて、いとどしき御思ひのほど限りなし
久しぶりにお目にかかる感慨はひとしおで、帝のご寵愛のほどは限りがない。
すこしふくらかになりたまひて、うちなやみ面痩せたまへる、はた、げに似るものなくめでたし
少しふっくらとして、悩んで面痩せしてしまっていらっしゃるが、そうであっても、他にはない艶やさでいらっしゃる。
例の、明け暮れこなたにのみおはしまして、御遊びもやうやうをかしき空なれば、
以前のように、明け暮れとなくお側にばかりいらして、管弦のお遊びも盛んに催される季節の頃であるので、
源氏の君も暇なく召しまつはしつつ、御琴、笛など、様々に仕うまつらせたまふ
源氏の君も頻繁に宮中にお呼ばれになり、お琴や笛などをご披露になられる。
いみじうつつみたまへど、忍びがたき消しこの漏り出づるをりをり、
お気持ちの平静を装っていらっしゃるけれども、隠し通せない感情の綾が見え隠れする折々に、
宮もさすがなることどもを多く思し続けけり
さすがに宮様も心中、様々に思いが乱れるのである。